[忌姫王]ききょう [Fear Princess] Kikyo
その城には、開かずの座敷が一室あった。家臣はおろか城主すら、年に数えるばかりしか、その間を訪れようとはしない。果たして彼らは恐れていた。其処に住まいし一人の姫を、己らが封じたその力を、彼女が手にした「うちでのこづち」を。即ち、姫が願った事や物を、手にした小槌が全てを叶える、或いは叶えてしまう、事を。ゆえに彼女は閉ざされていた。隠す為でも、漏れ出ぬようにする為でも無い。全ては姫から奪う為。彼女がこの世の知と理と愛とを、知らぬがままに逝く為に。
The lord and vassals of the castle only visited the room a few times a year. A princess lived inside with her magic mallet that could grant any wish. She was kept there not to be hidden, but to keep her ignorant and pliable as a tool.
…………ん
...Huh?
えいっ
Eh!
おねがいしますっ
Then, please it.
[鬼姫王]ききょう [Ogre Princess] Kikyo
獣も寄らぬ山の果て、人里離れたその城に、げに恐ろしき鬼が棲むという。鬼はその手の小槌を振るい、あらゆる者の願いを奪うと云われ、誰一人として城に近づく者はいなくなった。そうした噂が風に乗り、やがては逆に、鬼の首を討ち取らんとする者たちが現れるようになった。名だたる武芸者、或いは術者、それらが群れ成し城を襲う。だがしかし、誰一人として城に達する者は無かった。逃げ還った者の言に拠れば、行く先阻むは鬼では無く、たった一羽の啄木鳥だったと云う。
Rumor had it that an ogre lived in that castle with a magic mallet that could seize the wish of any who came near. Brave warriors and spellcasters ventured into the castle; those who fled with their lives spoke not of an ogre, but of a woodpecker.
…………ん?
...Huh?
えいやー
Eh~.
おねがいしまーす
Then, please it~.